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ファッションと映画の関係― 浅井隆が贈る、珠玉の映画まとめ5本

映画を世の中に送り出す、”配給”という仕事。映画監督・劇場の支配人、そしてWEB マガジン、webDICE の編集長でもあるアップリンク代表、浅井隆は、寺山修司ひきいる天井桟敷を経て、映画の配給にたずさわるようになった。
時代に迎合せず、さまざまな作品を送り出してきた彼が語る映画の力、そして、ファッションと映画の関係とは。

インタビュー:山田敦士

ハダカの自分を磨く。きっとそのために、映画はあるんだ。

高校生のとき、地元・大阪で寺山修司が主宰する劇団、天井桟敷の舞台『邪宗門』を見た。煙がもうもうと上がり、J・A・シーザーの音楽とともに劇場のセットが最後は解体して扉が開き、「劇場には面白いことなんてないんだ、外に出ていこう」というメッセージで終わる展開に、すごく衝撃を受けた。当時は1970年代中頃、いまとは若者を取り巻く状況がまったく違っていてFAXも当然携帯電話もない時代。ミニシアターなんてなければ、マクドナルドすらない。当時は、ネットもないから自分で動かないと何も情報が入ってこないので、ライブやイベントなど少しでも刺激のあることに接するために、雑誌を見たり、チラシが置いてあるロック喫茶に出入りしたりして。とにかくみんなが文化に飢えてた時代だったね。

高校卒業後、すいどーばた美術学院に通うために東京に出てきて、天井桟敷に憧れて入団試験を受けた。もともとスタッフ志望だったので入団後しばらくして劇団の舞台監督として、稽古からリハーサル、本番公演までを裏方として支える仕事をしていた。それが20代のとき。
10年ほど続けた頃に寺山さんが亡くなり、天井桟敷が解散することになった。それで自分で何かやってみようかと思って27歳のときに『アップリンクシアター』という劇団をつくったんだ。PlanBや原美術館などで3回ほど公演をしたけど、赤字で続けていくのが厳しかった。天井桟敷は寺山さんが代表だったからメディアも取り上げてくれたけど、無名の劇団を記事にしてくれるような雑誌もなかった。それで、編集プロダクションでアルバイトをしながら自分にどんなことができるか、しばらく考えていた。

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『ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイ』
画家を目指すレイ・カイザーと、当時既婚者だった建築家チャールズ・イームズ。二人は出会い、恋に落ち、やがてお互いの才能を認め〝イームズ・オフィス〟を立ち上げる。
時代に翻弄されながらも、あの有名なイームズ・チェアをはじめとした家具、おもちゃ、建築、映画と多岐にわたる作品を生み出していく。

監督:ジェイソン・コーン、ビル・ジャージー
出演:ルシア・イームズ(チャールズの娘)、
イームズ・デミトリオス(孫)ほか
配給:アップリンク
http://www.uplink.co.jp/eames/

当時ちょうど、イギリスのデレク・ジャーマンがロックバンドのザ・スミスのPVやパンクな『ジュビリー』など面白い映画をつくっていると話題になっていた。日本では、80年代半ば、ハリウッド的な娯楽大作が人気を集めていた時代に、アート性の高い映画に対して人々が少しずつ目を向けはじめていてミニシアターというキャパが100人ほどの映画館ができ始めていた。それで、イギリスのBFIというエージェントと契約をしてジャーマン監督の『エンジェリック・カンバセーション』という作品を吉祥寺のバウスシアターで上映した。天井桟敷の宣伝と同じように、チラシやポスターをつくって街に配布した。自分で立ち上げた劇団と違い、今度はデレク・ジャーマンという監督に興味を持ってくれていろいろなメディアが取り上げてくれた。幸い興行は赤字にならずに、うまくいったんだ。

映画の権利を買い、字幕を入れて上映するという〝配給〟の仕事を初めて行なったのがこのとき。ちょうどレンタルビデオが普及する時期と重なり、ソフトが全然足りない状況で、メジャーなタイトル以外でもビデオ会社が権利を買ってくれたという経済的にも助かったこともあった。その後、渋谷パルコでデレク・ジャーマンの短編を上映することになって、パルコと上映の契約をするためには、法人でなくてはだめだということで、アップリンクを正式に法人化することになった。

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『ノーコメント by ゲンスブール』
作詞作曲家/シンガー/画家/映画監督/小説家/カメラマンと多彩な顔を持ち異彩を放った才人、セルジュ・ゲンスブール。
20~60代までにわたり、自身の内面を語った録音テープをもとに構成されたドキュメンタリー。時代を彩った女優たちの映像も華を添えている。

監督:ピエール=アンリ・サルファティ
出演:セルジュ・ゲンスブール、ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンスブール ほか
配給・宣伝:アップリンク 提供:キングレコード
http://uplink.co.jp/nocomment/

天井桟敷時代にすりこまれていたのは、海外での経験だった。海外の演劇祭に参加して、ピーター・ブルックやモーリス・ベジャールなどが参加する同じ演劇祭に参加し最先端で表現をしていると感じていた。でも帰国すると3畳一間の生活だったけどね。オランダやフランスなどでは、舞台を上演した施設にカフェや映画館が併設されていて、小さなカルチャーセンターで本当に面白かった。劇団の公演がないときにはアムステルダムの街をひと晩中歩いてクラブにいったり、そんな時間がたまらなく楽しかった。

海外で経験した映画や音楽やアートなどのごちゃまぜカルチャーの感覚が好きだったから、現在のアップリンクではカフェもあればギャラリーもあるしライブもやるし映画でも社会的ドキュメンタリーからラブロマンスまで、さまざまなジャンルの映画を幅広く扱っている。社会全体がごちゃまぜなわけだし、区画整理された街ってなんだか居心地が悪い。

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『わたしはロランス』より

ファッションに関連した映画では、最近上映した『わたしはロランス』が話題になった。撮影当時、23歳のグザヴィエ・ドラン監督がつくった作品なんだけど、80~90年代をテーマに、当時のファッションや時代を舞台にしていながら、ただ過去をトレースしているわけではなく自分の感性で90年代のファッションやカルチャーを再構成している。モノをつくるのに年齢は関係ないというか、むしろ人間の才能って、20代をピークになだらかな下降線をくだるかもしれない、とすら僕は思っている。

ベネチアやトロント映画祭で話題になった、ドラン監督の最新作『トム・アット・ザ・ファーム』も上映するけど、『わたしはロランス』とは異なり、こちらは一転してモントリオールの田舎町を舞台にした心理サスペンスドラマ。舞台も時代設定もまったく違うのが面白い。ドラン監督は自分のスタイルに固執しないところがいい。

先日、『わたしはロランス』を上映している映画館の近くのルミネ(JR新宿の駅ビル)の館内を歩いたときに、日本っていいなって本当に思った。もし自分が女の子だとしたら、かわいくてきれいでキュートで、買い物したいモノがいっぱいあるんだろうなって。

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『わたしはロランス』
モントリオール在住の国語教師ロランスは、恋人のフレッドに「女になりたい」と打ち明ける。それを聞きロランスを激しく非難するも、彼の最大の理解者であろうと決意するフレッド。
周囲の偏見や社会の拒否反応に果敢に挑む長い年月。その先に待ち受けるのは…? 10年にわたる強く美しく切ない愛を描いたラブ・ストーリー。

監督:グザヴィエ・ドラン
出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ ほか
配給:アップリンク

『わたしはロランス』はたしかにファッション映画として見てもすごく面白いけど、心の中をむきだしにしたような葛藤やぶつかり合いが描かれていて、かっこいいとか、かわいいとかそういったものを超えた言葉にならない衝動を描いているところがお客さんに伝わってると思う。ちょっと頑張れば服が買えて、着飾れる。それって悪いことじゃないんだけど、きらびやかな服に包まれている中身を振り返ると、そこにはハダカの自分自身しかない。インスタントに自分を装うものがファッションだったとしたら、映画は見かけだけではない、心の中を変えていく力があると信じている。もちろんおしゃれに外見を着飾ることも大事。だけどたった2時間、中身のある映画を見てくれた人が、少しでも自分が望む方向に変わってくれたとしたら、とてもうれしい。

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『ヴィダル・サスーン』
ハサミで世界を変えた男、ヴィダル・サスーン。サスーン・カットと言われる斬新なカットと確かな技術で60年代スウィンギング・ロンドンのファッション・シーンを牽引。
現在の美容界に多大なる影響を及ぼした、今年84歳になる世界的ヘアスタイリストの生涯を追ったドキュメンタリー。

監督:クレイグ・ティパー
主演:ヴィダル・サスーンほか
配給:アップリンク
www.uplink.co.jp/sassoon/

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たとえば60年代の音楽やファッションに絶大な影響を与えたカリスマ、ゲンスブールの言葉から自分の美学を考え直すのもいいだろうし、美容業界に革命を起こしたヴィダル・サスーンや、美輪明宏さんの映画から、実際本人に会うことはできなくても、直接会って話を聞いたかのような多くのメッセージを受け取ることができるはず。

インターネットが普及して、以前よりずっと便利になり、知りたい事には瞬時にたどりつけるようになった。だけどどれだけ便利になったとしても、物事の本質的な事は昔から何も変わってないと思う。人間は、本来、愛している人に触れて、眼で見て、リアルな世界を感じることの方がはるかに感動するようにできているはず。

美輪明宏ドキュメンタリー
『美輪明宏ドキュメンタリー 〜黒蜥蜴を探して〜』
映画『黒蜥蜴』(1968年)により美輪明宏に魅せられたフランス人監督パスカル=アレックス・ヴァンサンが、本人への密着取材や横尾忠則へのインタビューなど敢行。
1952年の歌手デビューから、宮崎駿監督『もののけ姫』での声優出演時のエピソードまで、貴重なアーカイブ映像を交え、その唯一無二の実像と活動の歴史に迫る。

監督:パスカル=アレックス・ヴァンサン
出演:美輪明宏 ほか
配給:アップリンク
提供:パルコ
http://www.uplink.co.jp/miwa/

ネットショッピングで服を買うのもいいけど、たとえば織りや布地にこだわってつくったデザイナーの意図は、商品を実際に見て、テクスチャーを指で触ってみないとわからないよね。五感という回路をフルに使って、スマホやPCでみる見た目の美しさだけではない、作り手側のメッセージを触覚もふくめた五感で感じて最後は直感で買い物をする、そうすれば生きてるって実感が湧くはず。

買いたいものはたくさん街にあふれているし、その人自身の存在に挑戦してくるファッションもあれば、1シーズン限りのファストファッションもあるはず。売る側の戦略に乗らないためにも、いい映画を見て、いろいろな生き方や価値観に触れて自分自身の内側を磨いてほしい。

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浅井 隆(アップリンク代表)

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浅井さんが代表をつとめる『アップリンク』(東京・渋谷)にて。劇場やカフェ、ワークショップが行なえるルームがある施設のベースになっているのは、70年代に海外の街で見た、カルチャーセンターそのもの。

【関連情報】
アップリンク http://www.uplink.co.jp/

掲載号:SHUTTER magazine Vol.11
(2013年12月30日発売)

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