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映画製作における作品づくりのリアリティ”ドグマ95″について

90年代に生まれた”ドグマ95″というひそかなハリウッド映画レジスタンスがあり、日本でもミニシアターやコアな映画ファンの中で、ちょっとしたドグマブームがあったのを覚えていますか?

文:本手保行

 

作品作りにおける、本当の意味での”リアリティ”とは?

90年代、CGなどの特殊効果が映画の見どころになり、膨大な予算で量産されるハリウッド映画に対し、コペンハーゲンで1995年秋、ラース・フォン・トリアーら4人の映画監督によって結成された集団が”ドグマ95″だ。
当時、ハリウッド映画におけるリアリティとは、ハイクオリティなカメラやCGを使い、どれだけ予算をかけてリアルな質感に近づけるかだった。ドグマ95は、映画からそういった技術競争や過剰な演出という不純物を取り除き、”本物に近いものではなく、本物を作る”という、リアリズムを追求していた。

 

『セレブレーション』
ドグマ代表者の1人、ヴィンターベア監督によるドグマ作品の記念すべき第1弾。実業家の還暦祝いに集まった家族の秘密を描いたドラマ。ドグマの教科書。

『イディオッツ』
公衆の面前で知的障害者の振りをして人々の本音を探り、探ってしまったがために現実に戻れず、バカを続ける主人公。世界中の映画ファンにショックを与えた作品。

『ミフネ』
奇妙な共同生活の中で自分を取り戻していく、4人の男女の姿を描いた物語。タイトルのミフネは『七人の侍』の三船敏郎のことで主人公とちょっと関係があります。

 

ドグマ95は、”純潔の誓い”という10個のルールを設けていた。

1. スタジオのセットでなく、すべてロケーション撮影のみ。
2. 映像と関係のない音(効果音など)を乗せてはならない。
3.  カメラは手持ちカメラを使う。
4. カラー映画であること。人工的な照明は禁止。
5. 光学合成やフィルターを禁止する。
6. 殺人や武器の使用、爆破などの表面的なアクション禁止。
7. 時間的、地理的な乖離は禁止。
8. ジャンル映画は禁止。
9. フィルムはアカデミー35mm(スタンダード・サイズ)を使用。
10. 監督名はクレジットに載せてはいけない。

この10の誓いをドグマ財団に申請すると、認定が受けられる。

『キング・イズ・アライヴ』
監督はドグマ立ち上げメンバーの1人。砂漠の真ん中で観光客を乗せたバスが道に迷う。廃墟の村でたすけを待つ乗客たちは、リア王の芝居稽古をはじめる。

『ラヴァーズ』
『グランブルー』で主人公を演じた俳優の初監督作品。フランスに不法滞在するユーゴスラビア人の画家と、フランス人女性の恋愛物語。まるで人間観察をしている感覚に陥ります。

『ジュリアン』
『ガンモ』の監督や『キッズ』の脚本で知られるハーモニー・コリン作。ビデオカメラで撮影され、最終的にフィルム現像される、リアルな演技と絵画的なカメラワークが印象深い。

 

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かなり難しい条件だが、認定されれば世界に発信され、資金がなくても、才能さえあれば世界に名前が知れ渡るので若い作家たちを勇気づけ、ハリウッドのスタジオ主義に疑問を抱く監督たちがこの考え方に賛同した。ただ手持ちカメラでの撮影がルールなので見ていて正直、酔ってしまうし、過剰な演出がなく、物語にも強弱がないため、退屈と思うか、素朴な感動を受けるかは大きく好みが分かれるところ。

『幸せになるためのイタリア語講座』
ドグマ初の女性監督作で、ベルリン国際映画祭銀熊賞ほか4部門を受賞した作品。6人の男女がイタリア語講座を通じて出会い、喪失感や絶望を乗り越えていくハートフルドラマ。

『しあわせな孤独』
交通事故で首から下が麻痺した男と介護する彼女。ひいたのは病院の医師の妻。彼女の将来を思い冷たくする男と、彼女を慰める医師。その関係がじつに切ない名作です。

昨今、ドグマを口にする人をほとんど見なくなったのは、まあそういうことなのでしょう。あるサイト情報では2008年までに270作品が作られたそうですが、日本公開はせいぜい10作あるかないか。
あれから20年、いまは素人でも作品作りができ、世界に発信できる時代。けっこう無意識でドグマっぽい作品が多かったりする。だからこそあらためてドグマ作品を見て、作品作りやリアリティとは?を考えてみるのも面白いかもしれません。

 

掲載号:SHUTTER magazine Vol.15
(2014年12月30日発売)

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