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【連載コラム】写真家 大和田良 なにかを知ろうとする。それが新しいトリガーになる。

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Photography & Essey「うすあかりと、写真」第1回

Hasselblad 501C/M Leaf Aptus 22 CF Distagon 60mm f2.8 マニュアル露出(F16/1/4秒) ISO25 ホワイトバランス: 5000K

トークショーなどでよく「作品のテーマはいつもどうやって探しているんですか?」という質問を受ける。
学生の頃にはとにかく撮る量を増やした。それはいわゆるスナップに近い形でカメラを持ち歩いて撮って回るものがほとんどで、その頃にはテーマを見つけるというのは常に後付けのものになっていた。今でも日々のスナップはそうだけれど、自分の感覚に忠実に撮影を続けることで、ある程度の枚数が貯まるとなにかが仄かに見えてくるのだ。それまでは撮り続けるしかない。それも、すぐになにかが見える写真群もあれば何年かしてふと思い出すような写真もある。このあたりは撮ることでしかテーマというか、写真がなんらかのコンセプトを孕んでいるのを見つけることができない。
一方、ある程度最初からテーマやコンセプトが明確に存在する場合がある(コンセプトは撮っている間に変化していくが)。僕の作品でいえばワインの色を類型的に表した「Wine collection」シリーズや、今進行している「盆栽」シリーズがそうだ。
この二つに共通するのは、そのシリーズをはじめるまでほとんど全くと言っていいほどそれまでの僕の人生に関係が無かったもの。あるいは興味を持っていなかったものだ。そしてもう一つは、それらに情熱を傾けてコレクションしている人がいるということ。僕の興味はどちらかといえばここにある。
なぜワインを集めるのか。僕は一人のワインコレクターからワインについて話しを聞いた時にそう思った。写真を撮影することを仕事としている僕にとって、味や香りを表現する術は無かった。そこで色に注目しながらワインを集める理由を知ろうとした。そこには一本一本にそれぞれのコレクターの意図があった。様々な赤を撮りながら、僕はワインをコレクションする意味というものをいくつか知ることができた。
同じように盆栽も、それまでの自分には関わりの無かったものだ。この場合にも人との対話が始まりだった。当時「日本的なもの」というのはどんな被写体があるかと考えていた僕は、日本画の話をあるアートコレクターから聞いた。その中で扱われているモティーフに松があった。それを考えるうちに盆栽に辿り着いた。僕はリサーチを行い、実際に話を聞かせてくれそうな盆栽作家を捜して連絡を取った。そこで盆栽の歴史や価値を知り、さらに様々な盆栽を見るようになった。何百年という時を経て扱いの難しい盆栽が受け継がれていることは、ある時期からその存在そのものが僕にとって魅力的なものになっていった。それから、僕は盆栽を撮ることを本格的に始めていった。
そのようなことを考えると、自分の知らないことを知っている誰かに会うことは、新しいトリガーを生み出す一つのきっかけになるかもしれない。それはもちろん本や音楽、その他様々なアートにも可能性がある。要は、自分のそれまでの考え方を変化させてくれるような影響力に出会うことは、とてもエキサイティングなことなのだ。それがテーマを照らし出してくれることがある。

写真・文=大和田 良
東京工芸大学大学院メディアアート専攻修了。05年スイスエリゼ美術館による「reGeneration 50 photographers of tomorrow」に選出され以降国内外で作品を多数発表。
http://www.ryoohwada.com/

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