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写真家が教える、ポートフォリオのつくり方 鵜川真由子

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プリントした作品をファイルにまとめた<ポートフォリオ>は、自分のテーマや作家性を多くの人に伝えるために、とても大切なツールです。編集者やアートディレクターなど仕事の撮影で関わる人たちや、写真展を行う際の〝写真の見せ方〟について、雑誌や広告で活躍する写真家の鵜川真由子さんに、お話を伺いました。

取材写真・文=タナカトシノリ(SIGHTBOX)

(ページTOP写真)ニューヨークに住む日本人の愛、をテーマにした『NEW YORK LOVE STORIES』。一見、自然な雰囲気の写真でありながら、事前に頭の中に描いていたイメージをカメラにおさめるために、下見をして撮影場所の光や構図などをあらかじめ決めて撮影する、という手法を取っている。

POINT 1 仕事のポートフォリオは、幅広い作風の写真で構成する

――素敵な作品を撮っている写真家さんにポートフォリオ(作品ファイル)を見せていただくコーナーの第3回目です。さっそく鵜川さんのポートフォリオを見せていただけますか?

鵜川:今日は3冊持ってきたのですが、ではまずこのブック(ファイリングされ綴じられた形のポートフォリオ)から。仕事で撮影した写真をまとめたものです。

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仕事で撮影したポートレート(人物写真)をまとめたファイル。小道具を使うなど、何かしらアイデアを加えた写真を得意にしている。

――ポートレートですね。なにか特に気をつけていることはありますか?

鵜川:表情や雰囲気を重視して選んだものを入れています。撮影のときも、たとえば(有名俳優のポートレートを指差しながら)このあたりの写真は、1時間くらいたっぷり時間をいただいて、デートをするような感じで撮影しています。それほど時間がとれないときも雰囲気づくりには気をつけます。

――続くこのあたりはファッションのルックブック(カタログ)的な写真が多いですね。

鵜川:はい。白壁をバックにしたきれいめのものでまとめてもよいのですが、シチュエーションや小道具など自分のアイデアを取り入れたものがあった方が面白いと思い、そのような写真を入れています。

――写真家さんの中には、作家性を色濃く反映させたブックと仕事のプロモーション用のブックをはっきりと使い分けている方も多いと思いますが、鵜川さんはどのようなお考えをお持ちですか?

鵜川:これは仕事で撮った写真のブックではあるのですが、ぱっと見ていただいたときに私の写真の全体像や方向性を理解していただけるようなものになるように心がけています。ブックの中の写真の流れも、最初に一番得意で自分らしいと思える自然光で撮影したふわっとしたポートレートから表情や雰囲気に富んだ女優さんや俳優さんの写真へと続いて、そこでぱっと切り替えて毒やユーモアを含んだ少し変わった感じのもの、最後にきっちりとしたきれいなポートレートというように並べていて、この一冊で自分の写真というものを簡潔に表せていると思います。

POINT2 好きなことをやりきる。2年半かけて撮影した作品で、広がった世界

――なるほど。よくわかります。つぎのブックはどんなものですか?

鵜川:2冊目は、以前『Out of the Garden』というタイトルで開催した個展の写真をまとめたもので、私にとってとても思い入れのあるブックでもあります。

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『Out of the Garden』は外国人居留地に住む家族を撮影したシリーズ。ひとつのテーマを長期間取り続けた、初めての作品でとても思い入れがある。同名のタイトルで個展開催も行った。

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コルクボードを切り抜き、肉の写真をはめ込んだ自作のファイル。中のリフィルは既製品を使用している。手作りの体裁が、世界にひとつしかない価値を生む。

――と言いますと?

鵜川:私、学校を出たあとスタジオ勤務とアシスタント経験を経て独立したのですが、フリーで仕事を始めた頃は自分が本当に撮りたい写真を撮れていないというジレンマがあって。どうしてそんななのかと考えてみたら、自分がまだまだ精一杯頑張れていないからだと思えたんです。それで一度、1つのテーマをもう無理っていうところまでとことん撮りきってみようと決心して、そうしたらその頃たまたま知人を通じてこのモチーフに出会えたんです。

――外国で撮ったように見えますが?

鵜川:ちょっと特殊な場所で、日本の中にある外国人居留地なんです。一歩足を踏み入れると光も風も日本とはまるで違う別世界が広がっていて、とても魅力的に感じました。そしてそこに住む素敵なご家族との出会いがあって、結果的には2年半かけて撮影しました。そんなに長く撮るつもりはなかったんですけど、もっともっとってなってしまって。

――場所やご家族のことなどデリケートな要素もあると思うのですが、そういうことを超えて大切な1冊ということですね。やりきってみてどうでしたか?

鵜川:なんでいままでこのくらいまでやらなかったのかと。実際このブックがコンペ(公募展)の最終選考に残ったり、あちこちに持ち込んだりして、お仕事のお話をいただくことがとても増えましたし、カメラメーカー系列のギャラリーで大きな写真展もできました。はっきりとした転機だったと思います。なにより、仕事に限らず私の写真をきっかけにいろいろなことがつながって世界が広がっていく実感を得られたことが大きいです。

――ファイルの体裁も特徴的ですね。自作ですか?

鵜川:はい。収めた写真自体がニューカラー(70年代アメリカのカラー写真ムーブメント)を意識していますので、ファイルも当時の雑誌や本のようなテイストを出したくて。表紙はコルクボードを貼り合わせて自作しました。コルクを切り抜いて窓を開け、そこに肉の塊の写真を貼っています。この肉の写真、これだけでアメリカって感じがすると思って。リフィルは市販のものですが、中の台紙はナチュラルな色のものに替えました。

――とても印象的だと思います。それでは最後のブックにいきましょうか。

鵜川:これは旅の写真ですね。ヨーロッパを旅したときのものです。旅は大好きです。街にはそれぞれ性質というべきものがあって、人も街によってそれぞれで、その中に身を置くことがとても楽しいですし、必然的に写真もたくさん撮ります。

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ロンドンからライという街へ行く途中、電車の車窓から見えた景色。横位置の写真を見開き(ファイルを開いた状態)で大きく見せるのも、工夫のひとつ。

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作品ごとに複数に分けられたポートフォリオ。ファイルをだれに見せるかによって、中身の写真や順番を入れ替えることもある。

POINT3 作品を見せる順番が大事。中身を入れ替えることも

――今日見せていただいたポートフォリオや開催中(インタビュー当時)のNYの写真展など、演出のない自然なスナップ感を大事にされているように感じました。

鵜川:方法論としてはむしろ逆で、事前に撮りたいイメージが明確にあって、撮影場所は徹底的にリサーチしますし、小道具なども用意します。撮りたいのは、生々しくなくて、でもただきれいなだけではなくシュールさや毒やユーモアなどちょっとしたテイストが加わった写真ですね。

――人にポートフォリオを見せるときの順番のようなものはあるのですか?

鵜川:大抵の場合、まず1冊目の仕事の写真のブックをお見せします。独立したての頃は、まず私の個性を知っていただくことが先決と思っていたので、作品のブックを先に提示していたのですが、いまはこの仕事のブック1冊でわかっていただけるように工夫していますので。中の写真はときどき入れ替えていますし、見ていただく相手によって差し替えることもあります。あとのブックは相手の反応を伺いながらお見せしたりしなかったりです。どれをどう気に入っていただけるかはなかなか予想できなくて、意外なものを気に入っていただけることも多いです。いずれにせよ引き出しは多いに越したことはないですし、臨機応変にということですよね。

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ポートフォリオを開く鵜川さん。ポートレートは、シュールでユーモアのある世界観が好きだが、旅の風景などは演出せずに撮ることも多い。見る人が、どこに引っかかるか分からない。自分ではあまり気に入ってもらえないと思っていた1枚に興味を持ってもらうこともあるそう。

ポートフォリオのつくり方 まとめ
POINT 1 仕事のポートフォリオは、幅広い作風の写真で構成する
POINT2 好きなことをやりきる。2年半かけて撮影した作品で、広がった世界
POINT3 作品を見せる順番が大事。中身を入れ替えることも

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鵜川真由子(写真家)
松濤スタジオを退社後、アシスタントを経て独立。広告や雑誌などでポートレートを中心に活動するかたわら作品制作を続けている。2013年 TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD入賞。個展など多数開催するほか、TV出演など幅広く活躍。
www.m-ukawa.com

掲載号:SHUTTER magazine Vol.16
(2015年3月31日発売)

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