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【SQUARE UP!】写真家・熊谷直子 ともに過ごした時間を額装するように

【SQUARE UP!】写真家・熊谷直子 ともに過ごした時間を額装するように

instax“チェキ”のスクエアフォーマットギャラリーサイト「SQUARE UP!」では、チェキスクエアの作品を掲載。本ギャラリーでは、自らの世界を切り開くアーティストたちが撮影する写真を通して、表現することの面白さを世の中に伝えていきます。

SQ20で切り取る世界

今回のゲストは、ドキュメンタリーな作風を特徴として活躍される写真家の熊谷直子さん。インスタントカメラinstax“チェキ”の新製品「instax SQUARE SQ1」(以下、SQ1)で撮影していただいた作品をはじめ、写真やご自身について語っていただきました。

▼さまざまな著名人が撮影したチェキスクエアギャラリー「SQUARE UP!」もチェック!
https://www.shutter-mag.com/squareup/

Q:こんにちは!SQ1で撮っていただいた作品や、ご自身についてお伺いできたらと思います。
熊谷直子さん(以下、熊谷):よろしくお願いいたします。

Q:さっそくですが、パリに留学されていたと伺いました。
熊谷:90年代後半、芸術を学ぶために4年ほど留学していました。語学学校に行ったのち、すぐに写真の学校へ2年間通いました。当時の日本では好んで手を伸ばさないと触れられなかった芸術でしたが、パリでは日常に存在していました。ギャラリーの入場料はほとんど無料で、街のあちらこちらで面白い展示が行われている。朝起きるたびに、「今日はどこのギャラリーへ行こう?」とわくわくしたものです。パリでは芸術に触れる機会がすぐそばにあることを、肌にびしびしと感じました。

Q:日本の美術大学に進学する選択肢もあったかと思いますが、なぜ海外留学を?
熊谷:美大を目指していましたが、高校3年生のときに阪神・淡路大震災が起きました。関西の出身で被災地から近い場所に住んでいたので、当たり前のように過ごしてきた日々に震災の影響が及んでいることを痛いほどに感じました。10代の多感な時期に感じたことは、今振り返ると非常に大きかったように思います。次第に目の前にあったこれまでの日常から離れ、自然に外へと目が向いていきました。何か大きな理由があったわけではありませんが、海外に行って勉強したいという気持ちが膨らんでいき、バイトをしてお金を貯め、浪人を一年間経験した末に留学しました。何がきっかけかはわかりませんが、自然に流れるように行き着いた結果でした。

Q:幼少期から芸術に興味をお持ちだったのでしょうか?
熊谷:絵を描くのも写真を撮るのも昔から好きでした。写真はおそらく祖父の影響ですね。祖父の趣味がカメラだったんです。両親が共働きだったので、高価な一眼レフカメラを触っても怒られませんでした。おもちゃと言ったら失礼ですけど、カメラが自分にとっての遊び道具であったというのが、写真家の道へ進む初めの一歩だったかもしれません。

Q:SQ1を使って、どのようなテーマで作品を撮られたのでしょうか?
熊谷:中国の四川出身の友人が帰国する際、見送りに行きました。数日間をともに過ごし、お別れをするまでのストーリーをフィルムに収めました。彼女との出会いは2018年頃。友人を介して大阪で知り合いました。感覚的にすごく合って、互いにすんなりと気持ちが入っていきました。会った回数は少ないけれども、過ごした時間は一回一回深かったように思います。今回はお別れを撮るという気持ちでいたので、彼女をまっすぐ見つめたくて、真っ正面からとらえた写真を残しています。

Q:お花の写真も素敵ですね。
熊谷:2009年に出した「anemone」というタイトルの写真集を、以前、彼女にプレゼントしていたんです。そうしたらアネモネの花を持ってきてくれて。なんだかグッときましたね。

Q:ひとつひとつ作品を見ていくと、お別れの時間が近づいていくのが感じられます。
熊谷:新宿のバスタで、リムジンバスを待っているときに撮りました。彼女のそばに置いてあるのは、抱き枕のぬいぐるみ。クールな感じの子なんですけど、大きなイヌを抱えて飛行機に乗るんだ、とそのギャップがかわいくて(笑)。彼女の人柄が表れていて、お気に入りの1枚です。

Q:モノクロとカラーの写真、どちらもいいですね。
熊谷:展示作品の9枚全てをモノクロで撮る予定だったんですけど、昔から色に対して思い入れが強くて、モノトーンの中に色を混ぜたくなりました。仕上がりを見てみると、効果的にモノクロとカラーを使えたかなと思います。

▼熊谷直子さんのそのほかの作品は、こちらから!
https://www.shutter-mag.com/squareup/gallery_kumagainaoko.html

日常の中に伝えたいことがある

Q:熊谷さんの作品は、ドキュメンタリーな作風で広く知られていますね。
熊谷:ドキュメンタリーな風合いが色濃くなったのが、2011年に起きた東日本大震災以降です。高校時代に震災を経験しましたが、当時の自分には何をすることもできなかった。でも、大人になった今なら行動を起こすことができると思いました。たまたまボランティアで現地へ行っている方と知り合い、私も行かせてほしいとお願いし、気仙沼で過ごした時期がありました。それが縁となって、あるご家族と仲良くなりました。同じ年に母が倒れて認知症になり、身の回りのさまざまなことが変わって戸惑う私を、気仙沼の家族が支えてくれました。家族の形は一つだけじゃない、血の繋がりだけではない、日常をもっと撮っていきたいと強く感じるようになりました。人との繋がりにクローズアップし、自分の写真がどんどんドキュメンタリーになっていきました。伝えたいものが日常の中にあったんです。それこそが、私が大切にしたいもの。どうしても写真って、虚構の中で描いたり格好つけてしまったりする。悪いことじゃないけれど、自分の中ではどうもしっくりこない。日々の中にこそ美しさが宿っているのではないだろうか、と再認識しました。

Q:ご自身の作風やスタイルで、変わったと感じる点はありますか?
熊谷:以前に比べると表面的ではなくなったと感じます。昔はビジュアルを追いかけていた部分があって、たとえば花や綺麗な眺めなど、絵的に美しいものを撮っていました。現在ももちろん美しいものを撮っていますが、時としてそれは、人からするとあまり目をむけたくない部分であるかもしれない。けれども、自然体で作り込むことなく、ありのままの姿を写すことを大切にしています。

Q:今回の取材場所である「五風十雨・510cafe」には、初めてお伺いしました。写真家として活動されながら、カフェでも働いていらっしゃるんですね。
熊谷:もともとは、 30年前からある自然栽培の野菜を販売している八百屋さんだったんですよ。大切に育てられたここの食材を使って料理をするのが大好きで、昔からよく買い物に来ていました。お声掛けいただいたことをきっかけに、週末はカフェスペースで働かせていただくようになりました。お客さんは面白い方が多く、みなさんとお話することが大きな刺激になって、自分の知識や興味が広がっていくのを日に日に感じます。写真で感じたことをカフェの仕事に、カフェで感じたことを撮影の仕事にそれぞれ反映し、いい循環が生まれています。

Q:熊谷さんにとって、チェキはどんな存在ですか?
熊谷:チェキは、フィルムで撮るということを一番身近に感じられるものじゃないでしょうか。撮ってすぐにフィルムに像が浮き出るので、形として実感しやすい。フィルムカメラの最初のステップとしてもいいと思います。SQ1でいうと、これまで私はスクエアで撮る機会が多くなかったので、新鮮な気持ちでシャッターを切っていました。暗いところだとスローシャッターになるのも面白く、自分が意図しないものが撮れていて一枚一枚に発見がありました。好奇心が満たされていくこの感覚を、みなさんにも楽しんでいただけたらと思います。

写真=山田敦士
取材=百佐保里

プロフィール

熊谷直子(フォトグラファー)
20歳で渡仏しパリにて写真・芸術を学ぶ。帰国後藤田一浩氏のアシスタントを経て2003年独立。「人の温もりを感じる」ドキュメンタリーな作風で様々なジャンルにて活躍中。
@kumacaux
https://www.instagram.com/kumacaux/

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